あるアマチュアオーケストラの有意義な試み/親子コンサート

 前年に引き続き、港北区交響楽団の「親子コンサート」(2012.8.26)を拝聴させて頂きました。指揮は、先般「笑顔で演奏せよ」と団員に命じたとされる三矢幸子先生。
(*)主催/横浜市港北区役所ほか。ブログ「笑顔のコンサート」御参照。


 「親子コンサート」というと、とかく「お子様ランチ」のようなお手軽(失礼)なものを連想してしまうのですが、今回は前回にも増して充実したフルオーケストラと素敵な企画/演出で、聴衆(親子)を大いに楽しませてくれました。
 オーケストラは「お子様ランチ」どころか、例えば、ファーストが6プルト、チェロが5プルト、おまけにハープまで完備という一流重量級オーケストラで、圧倒的な音を聞かせてくれました。
 私は、ずっと以前、このオケのチェロの末席に居たことがあるのですが、現在のオーケストラの充実ぶりは目を見張るばかりで、お前がオケを辞めてくれたから音が良くなったのだ、と言われそうです。

 
 特に思うことは、赤の他人たちが寄り集まって、頼まれたわけでも、強制されたわけでもないのに、この暑い最中、ある目的のために何かをする------- ということの素晴しさです。
 とりわけ、子供たちはどう感じたことでしょうか。
 その時はそうは感じなかったとしても、後年、必ずこのコンサートでの感銘のいくらかでも、感動とともに思い出すに違いありません。
 特に、優れた音楽に接した子供たちは、後日、少しでも規模/内容の乏しいコンサートに出会った時、きっと「何かが欠けている」------ と感じることでしょう。
 この感覚こそが大切で、心の成長や周囲の音楽環境整備のためには不可欠のものなのです。
 これは普通の努力では与えることが出来ません。
 骨董品の鑑定は、鑑定者の命をかけた大仕事ですが、その要諦は「ひたすらに一流品だけを見続けること」なのだだそうです。


 プログラムには、普通、主催/後援団体、指揮者、司会者、オーケストラ、曲目等が記載されますが、こういうコンサートを企画/演出した「スタッフの方々」のお名前も是非一般に周知して欲しいものです。
 どういったプログラムだったかというと、
◇ まず開幕の「スターウオーズ」の音楽(素敵でした)
◇ 子供たちのための楽器紹介。チェロでは全員斉奏の「白鳥」(サン・サーンス)が出てきて、これは初耳。この曲は高音に至る音程が難しく、全員でかなりの練習を強いられたことでしょう(失礼)。後で客席の子供からお褒めの言葉がかかり、あるチェロ団員が思わず立ち上がって一礼(笑)するという一幕がありました。子供は厳しくて、少しくらいのことでは褒めてくれないものです。
 それから、オーケストラの曲は、旋律とそのいろいろな組み合せから出来ていることの説明のための、
◇ 童謡「どんぐりコロコロ」と「夕焼けこやけ」の(意外な)二重唱(聴衆全員)の試み
「第九」交響曲ベートーヴェン)第4楽章の主要テーマ----- 低弦に始まり、次第に各パートが加わって盛り上げるところ
◇ 「アルルの女ファランドール」の音楽
◇ 「ダッタン人の踊り」(ボロデイン)。これは東洋風の大好きな曲で、冒頭のオーボエのソロからして引き込まれてしまいました。
 そして大団円はといと、
◇「小さな世界」(デイズニーの素晴しい音楽)でのフルオーケストラと舞台袖に並んだ団員たちの手を振ってのお働き。この時は、キャラクターの人形までも客席に繰り出してきての大サービス。勿論子供たちは(古くなった大人の私も)大喜びです。


 今後とも、子供たちのために有意義なコンサートを開催して下さることを期待したい、と強く思いました。
<蛇足>
 いま、私は多摩地区のあるアマチュアオーケストラのお手伝い(押し掛けボランテイア)という格好になっているのですが、この団体は「ファミリーオーケストラ」という名称を持ち、そのせいで、オーケストラ練習には、ヴァイオリンを抱えた子供たちが、準団員の形で参加しています。(運営委員長は、子供の親で、事実上の後援会長という形になります)。
 アマチュアオーケストラといっても、最近のそれは、なかなか敷居が高いのですが、このオーケストラでは、団の趣旨に添って子供たちと一緒に練習しているのです。
 早くから生きた音楽に身近に触れられる幸運な子供たちがどのように成長するのか、とても楽しみです。
 このオーケストラのコンセプトには「親子コンサート」に共通するものを感じてしまいます。
<権兵衛の一言>
 しかし、子供だと思って軽く見ていると、そのうちにコンサートマスターパートリーダーになって、大人たちはアゴで使われてしまうかもしれません。
 いまや、小学生のオーケストラがベートーヴェン「第九」を演奏してしまう時代なのです。

持ち重りする薔薇の花

持ち重りする薔薇の花