寸感/芸術作品 製造法

芸術作品 製造法
 芸術作品 は「閃き」から生まれる、と私は思う。そして、いつも何も閃かないので、私は芸術家にはなれない。
 そう単純に信じ、また実際にもそうなのだが、世の中には違った便法も存在しているらしい。もう手遅れだが、もっと早く読んでおけば私も芸術家になれていたかもしれない----- そんな感じ(必ずしも幻想とは言えない)を抱かせる本があった。「アーテイストのためのハンドブック」。D.ベイルス。フイルムアート社。


 刊行以来数十年の古典であるという。
 内容は必ずしも「閃き」ということではなく、よく言われる「継続は力なり」ということらしい。
 ただ「閃き」とされてしまったのでは、凡人は立つ瀬も将来への希望もない。
 陶芸制作を例として、教室内を2グループに分け、一方には制作の「量」(作品の総重量、というところが面白い)を求め、他方には「質」を求める。数打ちゃ当るのか、一発必中を狙うのか、の違いである。
 結果をすべて「質」で判定したところ、最高作品は「量」グループから出た、という事である。


 芸術家が髪を掻き毟りならが苦吟数日、やっと芸術品が誕生----- というイメージとは異なり、これなら素人でも努力次第では何とかなるのではないか、と思わせるところが憎いではないか。
 石の上にも三年、無駄玉を打っていれば何とかなりそうだ。
 -----というわけでもなかろうが、楽器学習の例で言うと、とにかく諦めずに騒音を発していれは、そのうちにチャイコフスキーコンクールで優勝出来るかもしれないのである。
 しかし、現実はそう甘くないのは周知の事実。


 書評によると、一発狙いは、完璧さや理屈に拘り、失敗から学ぶ余裕もなく、結局は努力は徒労に終わるということらしい。
 量グループでは、制作を生活習慣化し、互いに励ましあい、制作手順や制作方法の検討が大切となる。
 あるノーベル賞作家は、小説の構想が何も思い浮かばない時でも、毎日の生活習慣として、タイプライター’(いまならワープロ)を叩くのを自分に義務付けていたという。
<権兵衛の一言>
 ただ頑張ればいい、というのでもないところが、やはり凡人を超えている。
 工夫あっての継続は力となる、ということであろうか。
 

アーティストのためのハンドブック  制作につきまとう不安との付き合い方

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