松田理奈の風格(その3)


 松田さんのブログによると、福岡公演(10/10)の成功のあとは、「もつ鍋」で締めくられたとのこと。松田さんの腕前からすれば、公演成功は当り前のことだ。(本人は蔭で努力されているのだろうが、これは言わぬが華)。
 CD「カルメン幻想曲」を聴いての感想は、前のブログにしるしたが、以下は若干の補遺。


◇ 合わせて収録されている「メロデイ」(グルック)の冒頭部分を耳にするだけで、松田さんの抜群の才能が窺われる。すなわち、冒頭のフレーズ提示の後、上向句に入るのだが、簡単な音階にも拘らず、そこに示されたクレッシエンドとヴィブラートの素晴しさは、既に凡百の才能の域を遥かに越えている。
◇ 「アンダンテ カンタービレ」(チャイコフキー)をよく歌わせていることについては、ただ恐れ入るばかりだが、後半部分でただ一カ所だけ出てくる二重音に実に味わい深いものがあり、感銘させられる。素人には出せない音だ。
◇ 「カルメン幻想曲」は、以前聴いたハイフェッツの演奏に充分比肩するものだが、更に「歌う」部分があり、これこそが松田さんの本領だ。(ハイフェッツが得意とする「序奏とロンド カプリチオーソ」についても全く同様)。
 松田さんは、録音とステージ公演では弾き方を変える、と言われているが、CD付属のDVD(*)には「カルメン」のステージ演奏が納められており、ここではCDを上回る自由奔放さで「カルメン」を弾きこなしている様子が見える。天才にだけ許される境地。
 私もヴァイオリンをいじるので、松田さんの奏法を観察出来るのが嬉しいが、素人がいくら見てもとても真似出来るものではない。「ヴァイオリンをいじる」という表現は「ヴァイオリンを運搬している」に変更しよう。
◇ 「歌う」能力というのは、「装飾音」、「トリル」の扱いにおいても非凡だ、ということである。


<権兵衛の一言>
 いくら「もつ鍋」を食べてみても、ヴァイオリンの腕前が上がるわけもないことは当然のことである。
(*)DVDは、CD「カルメン幻想曲」初回版に付属。(有料)。