日本のグローバル化?
日本人ほど外国人からどのように評価されているのかを、イジイジと気にしている民族はいない、とよく言われる。
いろいろな意味合いがあるようだ。
しかし、やたら外国を崇拝して、自分の身丈をそれに合わせようと、涙ぐましい無益な努力をする----- とういう時代は、もう過去のもだと思いたい。
それなら、外国人が日本人になりたがる姿というのはどうだろう。
在日十数年の英国人記者/コリン・ジョイスが書いた「日本社会入門」は、ふとそんなことを想像させる良書である。
著者は日本食を嗜み、銭湯を愛し、日本人が顔負けするほどに都会の路地裏にまで通じたプロのジャーナリスト。
まず、イギリスは紳士の国という日本人を洗脳し尽しているイメージ(雨傘にシルクハット)をブチ壊してくれる。
そういう例が全編に充ち満ちているが、鋭く指摘されたものは、例えば;
◇ 電話に向かってオジギをする----- 外国人がこれをやりだすと、「日本のグローバル化」が相当進んだ証拠?
◇ 「おニュー」という造語----- 和製英語に日本語独特のニュアンスの「お」が冠された素晴らしくもユニークな言語感覚の冴え。
私事で恐縮だが、私が僅か半年の在米経験で、アメリカナイズ寸前まで(英語が出来ないと人並みに扱われない、など)ボロボロにされっかかって帰国した後、日本食で蘇生し、秋の虫の音(外国では騒音)に癒され、酒のお酌に感激(外国では、個人の自由の侵害)させられたことは、いまだに忘れることが出来ない。帰国直後に新聞(全部が縦書きの日本語!)で読んだ「針供養」の記事から受けた感動も特筆しておきたい。
お役目を終えた針を人並みに供養するなんて、日本人の優しさは、世界に冠たるものがある。
日本は必ずしも昔から鎖国同然の国だったわけではなく、むしろ、外国から積極的に多くを学んできた民族だが、それでも「宦官」「科挙」「他国の宗教」等をモロに輸入して、民族性を損なわずにすませた先人たちの叡智には感謝あるのみである。最大の国難「元寇」もうまく切り抜けられた。
そうしたことを想起しながら、この内容豊かな本を読むと、実に教わるところが多いことを認めざるをえない。
訳文がこなれているのは、著者がすっかり(我々以上に)日本人の感覚を身につけて執筆に当たったからに相違ない。
でなければ、普通、翻訳書から受ける、あのなんともいえないバタ臭さと分かり難さで、やはり日本のことは日本人でなければ分かる訳はない、と変に開き直って本を捨ててしまうことになっただろう。
<権兵衛の一言>
以前は海外経験者から二言目には「アメリカでは〜」「イギリスでは〜」と説法され、訳も分からず平伏させられていたものだが、最近はそういう風潮は治まった?ようだ。
「日本のグローバル化」といっても、妙な国粋主義に走ってはいけない。常に「?」を忘れずに、などと思うのだが、実はこれが最大の難事かもしれない。
国際化の最たるものは「日本人であることだ」、と言われて、次ぎは「日本人とは?」という問題に頭を抱えることになる。
この本は、そうした日本人の悩みを暖かくサポートしてくれるかもしれない。
「ニッポン社会」入門 英国人記者の抱腹レポート (生活人新書)
- 作者: コリンジョイス,Colin Joyce,谷岡健彦
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2006/12/07
- メディア: 新書
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