アンネット・ストウルーナート(再)


 以前のブログで、ストウルーナートの「ゴンドラの唄」に感銘した、と書いたが、その続き。
 外国人が日本の歌をメインに取り上げるのは珍しいことだし、それに「ゴンドラの唄」を含む歌唱そのものが、日本の心を素直に体現したものだっただけに、強く印象に残った。日本語歌詞の意味を完全に理解した上でないと、ここまでは歌い切れないと思えるほどの歌唱力。
 しかし、その後、新聞等で報じられた彼女のプロフィルを拝見すると、実は彼女は日本生まれで、後にウイーンでオペラ歌手として成功した人なのだそうだ。


 彼女の歌にどことなく異国の風情を感じたのは、外国のオペラの世界で生きている感触が感じられたせいなのかもしれない。
 ウイーンでは「いじめ」にあったそうだが、カラヤンのお声がかりで救われたとかいうエピソードも興味深い。欧米でも「いじめ」がある、ということに驚くのではなく、カラヤンがカバーしてくれるほどの努力を彼女
が払ったということに感じ入ったのだ。


 私が聞いたのは「ゴンドラの唄」のほか、「ちんちん千鳥」「城ヶ島の雨」「初恋」「この道」「波浮の港」「証城寺の狸」「捨てた葱」などであったが、どれもしみじみとした日本情緒を見事に歌い上げた名演である。
 とりわけ「捨てた葱」は短い曲であるが、捨てられた葱が見る間に萎れて枯れていく様が描かれて、大袈裟に言えば鬼気迫る緊迫感があった。
 いずれ、大好きな「浜辺の歌」「春」などを聞いてみたいものである。


<権兵衛の一言>
 あらためて「ゴンドラの唄」を聞き、胸に迫るものがあった。志村喬の「生きる」を是非もう一度見たいものだ。
 街で若い女性たちがキャアキャアと群れ騒いでいる様子を見ると、つい「命短し 恋せよ乙女」と心のなかで呟いてしまうが、それは必ずしもネガテイヴな意味ではなく、「声援」の気持ちも込められている、と最近では思うようになった。
(*)彼女の歌はCDになっているそうだ。