犬の真心


 知人から、ある本を薦められた。岸本葉子「がんから5年」。
 岸本氏は、癌手術後、精力的に病気とともに生きる人生の意味を、世に問い続けてきた方である。
 普通、病気療養後、退院すると「生還おめでとう」として祝意を表され、それで終ってしまう。ところが、癌の場合、むしろ退院後が問題で、そうした問題意識を初めて提出した人として、私には感銘深いものがある人である。(これまでのブログで、何回か取り上げてみた)。


 この本は「退院おめでとう」とすませてしまうノーテンキな人への「警鐘」として受け止めるのがいいように思われる。
 それは癌を特殊な病気としてではなく、一般的な「慢性疾患」として考えてみるだけでも、思い半ばに過ぎるものがあるであろう。
 何も感じない人がいるとすれば、むしろ羨ましいくらいのものだ。


 例えば「楽しいことをするのではなく、することを楽しむ」と言われているそうだが、これはなかなかに含蓄のある言葉として受け止めることが出来よう。
 別な人の言葉として「生きる年限は決められないが、生き方は自分で決められる」というのがある。
 もっともなことであるが、大病をすれば「生き方」もままなくされてしまうのではないか。


 知人は重ねて「闘病記」としてではなく「人生訓」として読むべきだ、と強調していた。
 早い話「風邪と過労は大病の元」と警告しているのだという。
 心すべきことだ。


<権兵衛の一言>
 街を歩いていたら、主人に身をすり寄せて甘えている犬の、この上なく幸せそうな姿を見た。
 人の幸せとは、どこにあるのだろうか。

がんから5年―「ほどほど」がだいじ

がんから5年―「ほどほど」がだいじ