ゴンドラの唄

 
 思うところあって黒澤明監督の不朽の名作「生きる」のDVDを求めることとした。
 求める理由の一つには、作品のなかで主人公が自分の行く末を覚悟して歌う「ゴンドラの唄」の名場面を見てみたいという気持がある。


 このゴンドラの唄は、まるで「生きる」に使われることを想定して作曲されていたかのように、まことに見事に作品に活かされている。
 作品を見終わった後でも、この唄が強く印象に残り続ける。黒澤監督の巨匠たる所以は、この曲を見いだし、作品中に用いたという点にある、と言っても過言ではあるまい。


 作詞/吉井勇、作曲/中山晋平、の名コンビが生み出す印象深い歌詞、特に4番末尾の「今日は再び来ぬものを」という肺腑を衝くフレーズは、涙を誘わずにはおかない。


 唄は「命短かし 恋せよ乙女」と歌い出されるが、人生80年の現在とて、歌の心に変わるところはあるまい。


<権兵衛の一言>
 今秋、松本幸四郎主演で「生きる」のリメイク版が公開されるそうだが、「ゴンドラの唄」がどのように扱われるのか、見てみたいものだ。
(*)同じくリメイク版として「天国よ地獄」も公開される由。

天国と地獄 [DVD]

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