言葉の危うさ


 闘病中の知人を見舞った友人の失敗談。
 知人の様子を、心配している人たちに知らせようと電話した時のこと、何気持ないいくつかの言葉が、思わぬ波紋を呼んでしまった。


 入院患者の個人情報保護のため、病院側ではいささか(当然に)神経質になっている。例えば、見舞客にやたらに患者の病室を教えない。(見舞客を装った置き引きもいる)、病室入り口に患者名を表記しない、など。
 また、外来で受診患者に案内する時も、名前を呼ばず、受付
番号で呼ぶようだ。


 そこで、起こったことは;
◇ 病院を訪れて面会許可を求めるのが面倒になっている

          • と伝えたところ、聞いたほうは、これを「面会謝絶」(危篤状態)と勘違いしてしまった。

◇ (面会は難しいから)何かあったら事情を知らせる

            • と伝えたところ、聞いたほうは、いよいよ最後の時か、と早とちりしてしまった。

◇ 面会に行かれる予定があるか

            • と聞いたところ、最後のお別れを早く、と受け取られてしまった。



 ことがことだけに、笑い話ではすみそうにない。


<権兵衛の一言>
 闘病記にもいろいろあるが、友人が擧げた1冊。
 堀辰雄風立ちぬ
 冒頭の名文の「縁だけ茜色を帯びた入道雲」という表現が、いつまでも心に残るそうだ。
 前にご紹介した戦没学生の詩の冒頭----遠い残雪のような、を思い出した。

風立ちぬ (集英社文庫)

風立ちぬ (集英社文庫)