生きかた上手下手は才能?


 ひとしきり医療についての雑感を書いてみたところ、友人から一冊の本を薦められ、購入してみた。
 日野原重明「新・生きかた上手」ユーリーク
 既刊の「生きかた上手」、「続・生きかた上手」は書店になかったので、おいおいと求めることにしている。
 合わせて数百万部のベストセラーで、これまでその盛名は知っていたが、有名過ぎるものはあまり興味がないという変な癖で、いままで敬遠していたもの。


 ベストセラーとなるについては、まず、内容そのものよりも著者の魅力がある。
◇ 現役医師で、病院経営、ホスピス経営、後輩指導、講演、執筆、など目をみはるほどの活発な活動ぶり。
◇ 何よりも、年齢90代という驚くべき強靭さ。それも1日1300キロカロリーという食事だけで、階段を一段飛びに上がるという壮年顔負けの体力(普通、1200キロカロリーは寝たきりの人と聞いている)。
◇ 文章は、古希を20年もクリアした人ならではの、人生を達観した味わいがある。
◇ 現在行っている研究では、その成果が達成出来るのは10年先ということで、先生はそれまでは死ねないと意気軒昂。


 先生は、90代の自分でもこれくらいはやれるのだから、若い人は頑張れない筈はない、という激励の意味もあって、この本を書かれたのだと思われるが、一読して感じたのは、負け犬を自認するわけではないが、とても叶わないなあ、という感慨であった。
 上手というよりも、上手に生きられるだけの才能-----そのために上手に努力出来る才能を、もともとお持ちの方のようにお見受けする。
 平凡な人間は、あまり高望みせず、自分に合った生き方(才能)を早く見付けて、それなりに努力して小成
に甘んじたほうがいいのではないか、とも感じた次第。


 これとは別に、死生観にわたる内容面では、流石に教わるところが多かった。ベストセラーの理由は、この部分にあるのだろう。
 先生は、医師は一般の人に、病気ではなく、健康について説かなくてはなりません、と力説しているが、平凡
人の死生観の多くが医療についての無力感に結びつくことが少なくない印象があるなか、この主張には励まされるものを感じる。
 正直、病院で医師から受ける説明は「病気」だけに終始していると申しては叱られることになるのであろうか。


<権兵衛の一言>
 一度、先生の著書を拝見して、自分の「生きかた下手」を自覚し、そこから再出発しても遅くはなかろう。

生きかた上手

生きかた上手