「南太平洋」----ミュージカルの最高峰
最近、幸せな気分でいる。以前から探し求めていた「南太平洋」のDVDが、たまたま立寄った書店で入手出来たからである。
ブロードウエイで大ヒットしたこの傑作が映画化されたのは、もう数十年前。映画それからテレビ映画で何回も見た私は、まずLP盤を手に入れ、それからこの作品のビデオ(DVDはまだない)を探していた。今回この作品に再会出来たのは、DVDという技術のお陰であろうか。
これがブロードウエイ初演されたのは、太平洋戦争後、僅か数年後のことだったらしいが、仇敵日本との戦争場面は、むしろ舞台設定の背景として扱われているだけで、中心はミュージカルそのもの。
R.ロジャースの名曲の宝庫とされているのは当然だが、感嘆させられるのは、クラシック音楽の基本をしっかりクリアした上に、ジャズやロック等の手法も巧みに取り入れ、ミュージカルをアメリカが生んだ20世紀最大の音楽資産に仕立て上げている点である。
ベートーヴェン、モーツアルトが20世紀に再来したとしても、こうした傑作を生み出せたかどうか。ミュージカル(オペレッタ)の名手ロンバーグは、ヨーロッパでは売れず、アメリカで大成功した。名作「学生王子」は、彼の作品である(このなかの「セレナ^デ」を毎晩のように聞いている)。
ミュージカルとは何か、を説明する柄でもないが、つまりは音楽(クラシック系/ポピュラー系)、歌、踊り、所作等が、すべて観客本位のエンターテインメント路線で貫かれているもの、とでも言えようか。
私は一度だけブロードウエイでミュージカルを拝観する機会を得たが、音楽もさることながら、まるでコンピュータ制御のように見事に統一され、洗練された舞台の動きに圧倒されたものだ。
(もちろん冗談だが)アメリカ人を死ぬほど閉口させようと思ったら、「能」を強制的に見せるとよい、と言われる所以だろう)。
そして「南太平洋」こそは、数あるミュージカルのなかでも最高位に位置するもの、と確信して憚らない。その魅力を私なりに述べさせて貰うと;
(*)作品を評価するのに、多くの作品を聞いて順位を付けたり、アンケート方式を取ったりすることがあるが、私は採らない。そもそも客観的評価なるものが存在する筈がないのだ。
自分の好み、偏見と独断、それがすべてである。
*) 名曲の宝庫であることは、いくら強調しても強調したりない。しかも、ただ美しいだけでなく、人生を明るく謳歌する前向きの姿勢に溢れている。
*) 詳説は省くが、人種問題とも取れる問題をクリアしようとしている。
*) 名旋律「バリハイ」とともに映し出される夢のバリハイ島は、人間の持つ限りない憧憬の念、美しいものへの情感、などを見事に象徴しているように思われる。
好きな R.ロジャース作品には、もう一つ「サウンド オブ ミュージック」がある。これは説明を要しまい(やっぱり、南太平洋のほうが好きだが)。
ついでながら(余計なことながら)好きな映像作品で、手元に集めたものは「メリーウイドウ」、「カルメン」、「アイーダ」、「ローマの休日」、「七人の侍」。
あと欲しいものは黒沢作品の「用心棒」と「椿三十郎」、それに「飛べフェニックス」。(リメイク版が出ている由)。
好きな映像作品については、また感想を述べさせて頂く機会を得たい、と思っている。
<権兵衛の一言>
主人の定年生活までの人生で、集めたのはたったこれだけか、という気もするらしいが、これらに出会えただけで充分、というのが実感ではあるまいか。
犬を扱った作品が見あたらないのは気に入らないが。
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