民主党政権の歴史的役割


 日本で「政策だ」「政局だ」と騒がれている最中に、オバマ政権が誕生した。初の黒人大統領が持つ意味は図り難く大きい。就任演説を聞いた評論家/佐藤優氏は、アメリカ建国に際しては、まず今の盟友イギリスと戦ったのだ、と述べた点に注目していた。
 従来の説----- メイフラワーでアメリカ上陸、そして土着の人や西部を排除、開拓して、現在のアメリカを築いたという通説を除け、先住民、異教徒、異国民たちとの共存の上に建国という大事業を達成した、という新たな建国神話を説いたのだ、ということらしい。
 「我々は一つ」を標榜するオバマ氏の考えをそのまま写し出したような素敵なコンセプトではないか。
 新大統領が直面する課題は、経済再建、中近東問題、環境/エネルギーなど、大きなものばかり、しかも、日本に直結する問題ばかりだ。必ずしも穏健/平和政策というのではなく、それは強大な軍事力を背景にしているという事実によって、日本の中近東政策にも大きく影響する。


 日本は「我々は一つ」どころか、ことあるごとに政権交代の大合唱が国会を包み込んでいる。
 自公政権は低い支持率で国民から見放されつつあるように見えるが、そんな窮境のなかで敢えて消費税アップの環境を整える努力を続けているのは特筆に値する。何故なら、従来の「政局」の原因は、一にも二にも財源不足を取り繕うための政争に尽きる、と言えるからであり、増税は避けられぬ選択肢であるからだ。
 国民もそれ(総論)が分かっていながら、いざ消費税のこと(各論)となると反対に血道をあげるという構図が続いている。選挙に取ってタブーであるのは与野党ともに熟知の問題である。
 そして、野党はダンマリを続け、与党の自滅をひたすらに待っている。消費税に言及した麻生首相は(サポートする与謝野大臣とともに)この点では、先見性のある勇気ある宰相としての名を残すことだろう。


 問題は選挙だ。自公大敗必至、という観測が大勢だが、与野党ともに過半数は取れない、という見方もある。その場合も、民主党を中心とする政権が出来るという見方が有力だ。
 政権を取った民主党は何をするのだろうか。その主張に従えば、何が何でも経済再建、雇用確保、福祉充実、公務員改革、特殊法人整理、無駄金/埋蔵金処理など。
 国民の支持を維持確保するためには、自公が手こずっている公務員改革、特殊法人整理、無駄金/埋蔵金処理などは、相当な荒療治で強行するしかないだろう。
 そのうちに、経済も全治3年の修復期間を経て好転してくるかもしれない。しかし、国家100年の大計である安定財源確保は、増収、特殊法人整理、無駄金/埋蔵金処理だけでは達成出来まい。
 自公が仕掛けた消費税アップの課題(法定化)は、時限爆弾のように否応なく民主党に迫ってくるだろう。
 また、民主党の国連中心の安保政策だけでは、例えば、アフガン政策において、アメリカの圧力に耐えられなくなるかもしれない。
 そして、そのうちに自公がまた勢いを盛り返して政権交代となるかもしれない。
 その折には、民主党は公務員改革、特殊法人整理、無駄金/埋蔵金処理などを達成した政党として歴史的使命を終えることとなる(かもしれない)。
 そして、数年先には、また政権交代が------。
 その頃には自民、公明、民主などの党名が残っているかどうかは分からぬことだが。


<権兵衛の一言>
 政権交代と聞くと、かっての美濃部都政が思い出される。国政と地方政治、経済/社会状況など、まるで異なった環境だったが、その興亡につては感慨深いものがある。
 革新都政として都民の熱烈な関心を呼んだ点では、与野党のネジレ現象で、国政の内情を国民の前に露出させた事情と似ている。そして、好景気に支えられた都の税財政は福祉バラマキ/無料化政策を呼び、不景気到来とともに対応の無策によって大赤字とともに終幕を迎える。
 とりわけ、都民視線という意味で、都民の一人でも反対したら、その政策は取りやめ------ という今から考えたら想像も出来ぬほどの政策論がまかり通っていたことは(時代の声とはいえ)残念なことであった。


 未曾有の不況克服という点では与野党とも求められる対応は共通しているが、将来の安定財源確保策という点では自公と民主のいずれが責められるべきであろうか。